飲食店の経営者も知っておきたい、有給休暇の法律問題について
バーや居酒屋、カフェ等の飲食店を開業して、軌道に乗ってくると従業員の雇用を検討していくことになります。
従業員を雇用することで、個人事業であっても、法人で経営していたとしても、オーナーの負担が減少し、オーナー自身がお店の利益を上げるための時間を作ることが出来るようになってきます。
しかし、従業員を雇用すれば様々な法律を考慮していく必要があります。
その一つに有給休暇の問題があります。
そこで、今回は有給休暇の法律問題について書いていきます。
飲食店の経営を検討している方、または既に飲食店の経営をしている方の参考になれば幸いです。
年次有給休暇とは?
年次有給休暇とは、一般的には年休・有給休暇と呼ばれ、4週で4日の休日以外の休日以外の休みで、その日は休んだとしても給料が支払われる休暇になります。
有給休暇の目的は?
年次有給休暇の目的は、日々業務を頑張ってくれている労働者の方の心身を共にリフレッシュさせるという目的があります。
この年次有給休暇は、雇用主の権利ではなく、労働者の権利になりますので、雇用主側は雇用されている者が安心して有給休暇を取得することができるような職場の環境を作る必要があります。
したがって、有給休暇を取得することで、昇級や賃金等で不利な取扱いをしてはいけません。
有給休暇の取得方法は?
有給休暇の権利を得るためには、労働基準法39条で規定されています。
労働基準法39条1項には
1、使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
と規定されています。
つまり、有給休暇の権利を取得するためには、
・雇用されてから6ヶ月以上継続して勤務すること
・付与日の直近1年の全労働日の8割以上出勤していること
上記2つの条件を満たす必要があります。
<3>全労働日の8割とは?
上述した「全労働日の8割」を計算するにあたって、
・業務上の負傷や療養期間
・産前や産後の休業
・育児、介護休業法に基づく休業
・有給休暇を取った日
などについては、出勤したものとみなさなければなりません。
年次有給休暇の増え方は?
有給休暇は最初の6ヶ月を経過した段階で10日間の有給休暇を取得する権利が与えられます。
その後、1年6ヶ月を経過すると11日、2年6ヶ月を経過すると12日と1日ずつ増えていくことになります。
さらに、3年6ヶ月を経過した後からは2日ずつ加算されるようになり、6年6ヶ月を経過した時点で上限の20日に達することになります。
ちなみに、有給休暇は2年で時効消滅することになりますので、注意が必要です。
非正規雇用の場合でも有給休暇は取得できる?
非正規雇用であったとしても、要件さえ満たせば有給休暇を取得することができます。
ただし、正社員と比べ労働日数や労働時間が短い場合は、労働日数などの比率を考慮して、日数が定められることになります。
これは厚生労働省令で定められています。
例えば、1週間の所定労働日数が4日以下の労働者や、年間の所定労働日数が216日未満の労働者等でも、出勤率が8割以上あり、半年以上継続して勤務していれば、その割合に応じた日数の有給休暇を取得することができます。
ちなみに、労働基準法は最低限の基準を定めているものであり、就業規則等で、労働基準法よりも多くの有給休暇を与えることは、問題はありません。
時季指定権と時季変更権について
労働者が有給休暇を取得するには、○日〜○日まで有給を使います。と休みたい時期を雇用主に申し出るだけで取得することができます。
この労働者の権利を時季指定権といいます。
原則的には、雇用主は労働者の有給の申出を断ることができませんが、有給を与えることで事業の運営に大きな支障をきたす可能性がある場合は、他の日程で有給を取ってもらうことができます。
この権利を時季変更権といいます。
しかし、時季変更権の権利の行使は、ただ業務が忙しい、人手が足りない、という理由だけでは行使することはできませんので、注意が必要です。
つまり、時季変更権を行使するためには、相応の理由が必要になります。
有給時の賃金は?
有給休暇を取得して、休んだ場合には雇用主は労働者に賃金を支払う必要があります。
この賃金の金額は、原則的に、就業規則等の規定に従うことになり、平均賃金や通常働いた場合に支払うことになる賃金などの金額を支払うことになります。
まとめ
バーや居酒屋などの飲食店を開業して、経営していくと従業員を雇用していくことも考える時がやってきます。
そうなると、色々な法務問題も考慮していく必要があります。
今回は、その中でも年次有給休暇について書いてきました。
飲食業の方の参考になれば幸いです。
大阪バー・居酒屋開業サポートセンターでは、バーや居酒屋などの飲食店を開業するための許可、届出以外にも、行政書士が法務問題の相談も対応させて頂きますので(必要があれば社労士や公認会計士・税理士なども無料でご紹介します。)、飲食店の開業などでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。